STORY

二人の夢

 私は十数年児童福祉の仕事に携わってきましたが、
 体を動かすのが好き、自然が好き、料理が好き、ものづくりの仕事がしたい、ということで農業を志しました。

妻との別れ

 妻も農業を応援してくれていました。田舎暮らしを楽しみたいね、というのが二人の夢でした。

 しかし、田舎暮らしの夢を叶えることはできませんでした。

 妻は癌で亡くなりました。

 亡くなる半月前には食べることもできなくなりましたが、私の手料理を最後まで食べたいと話していました。

畑で想う

 彼女がなぜこんな早くに死ななければいけなかったのか、生きる意味とは何なのか悩みました。

 妻を看取り畑に戻ると、植物が、虫たちが、一生懸命にたくましく生きて、死んでを繰り返す姿に気づきました。

 雑草だ害虫だと言われる存在も、一つも無駄なものはなくて、自然の循環の中で自分の役割をこなしている姿が愛おしく感じました。

 命には意味があるんだよと、励まされた気持ちでした。

農業を通じてやりたいこと

 私が農業を通じて目指すミッションの一つ目は、


病気の人でも食べられる野菜をつくること。

 農業を学ぶ中で、肥料や農薬を使った野菜が食べられない方がおられることを知りました。妻もなくなる半月前には食事のできない体になりましたが、私の手料理を食べたいと話していました。
 健やかな時も病める時も、大切な人と温かいごはんを食べられる幸せな食卓を作りたい、そのための農業者でありたいと考えています。

 もう一つは、

 農を通じて子ども達に生きる力を育むことです。

 畑に立つと、鳥や木々のさざめき、草木のにおい、頬にあたる風、五感を通して様々なことを感じられます。

 私が畑を通じて感じた自然の楽しさ、自然への畏怖、親しみを、伝えたい。

 農業体験やキャンプを通じて、畑から学ぶ、畑とともにある暮らしを作っていきたいと考えています。